プレスリリース 2003年2月8日

「近赤外線で捉えた”光る”おおかみ座の暗黒星雲」




低解像度画像(54KB)

中解像度画像(633KB)
高解像度画像(3.9MB)





画像左はAAO(アングロオーストラリア天文台)・AURA(天文学研究大学連合)提供
画像右は名古屋大学・国立天文台提供


南アフリカ1.4m望遠鏡と近赤外線カメラSIRIUS(シリウス)とを組み合わせた観測で、おおかみ座暗黒星雲が近赤外線では光る星雲として姿を現した。

低温の塵とガスが集まり暗黒星雲が作られる。人間の目で見ることのできる光、可視光を使った観測では暗黒星雲の中の塵が背景の星の光を効率良く吸収するので、星のちりばめられた空にぽっかりと穴の空いた「暗黒」な部分として暗黒星雲は認識されてきた。暗黒星雲は星が作られる現場であり、星がどのように作られるかを理解するためには暗黒星雲での塵やガスの振る舞いを研究することが重要である。
               
おおかみ座暗黒星雲は我々に最も近い(約450光年)暗黒星雲のひとつであり、南半球から観測しやすい場所にある。2001年6月に南アフリカ1.4m望遠鏡と近赤外線カメラSIRIUSを使ってこの暗黒星雲の最も「暗黒な」部分を観測した。観測には可視光(0.4-0.7ミクロン)よりも少し波長の長い近赤外線の3つの波長(1.25ミクロン、1.65ミクロン、2.15ミクロン)を用いた。波長の短いほうから、青、緑、赤の色を割り当てて作った擬似カラー合成図が画像(右)である。視野の広さは約9分角×9分角(満月の面積の約10分の1)。画像(左)の可視光では大部分の場所で星は見えず真っ暗である。一方、近赤外線は可視光よりも塵に対して強い透過力を持っているため、暗黒星雲の背後に隠されて可視光では見えなかった星々が観測されている。それだけではなく、可視光の画像では真っ暗な部分が近赤外線では光る星雲として観測された。これは
背景の星々の光を暗黒星雲中の塵が反射したものであることが星雲の明るさ等の解析からわかった。星雲の色の違いは奥行き方向のガスと塵の量を反映している。黒いところは、ガスと塵が奥行き方向に最も濃くある場所である。奥行き方向のガスと塵の濃さをあらわす量として、可視光が向こうからこちらへ通ってくるときどのくらい光が弱められるかという量がしばしば使われる。この場所では、100億分の1のさらに100億分の1に弱められる。黒い部分に続いて、赤かっ色、黄かっ色、青の順でガスと塵が薄いことがわかった。この画像の中では、主に3つのガスの濃い部分が見られ、それらを薄いガスが取り囲んでいる。それに加えてガスの濃い部分どうしを結ぶ構造や、彗星の尾のような吹き流し構造も鮮明に現れた。この結果からは暗黒星雲中に多く存在する塵の性質にも新たな知見を与えた。暗黒星雲の中にどんな大きさの塵がどのくらいの数で分布しているのかは未だによくわかっていない。今回の観測によって、これまで広く使われてきた塵のサイズ分布モデルと比べて、少なくともおおかみ座暗黒星雲の中には大きな塵がより多く存在することがわかった。

近赤外線カメラSIRIUSは高感度・広視野かつ精密な色の測定が可能な装置である。このような高性能カメラの出現で初めて、塵とガスの非常に濃い暗黒星雲が光る星雲として観測でき、その詳細な構造を表面の明るさから知ることができ、塵の分布や性質を詳しく知ることができた。このような手法は新機軸であり、さらに多くの暗黒星雲に適用され、暗黒星雲の構造やその中の塵の分布や性質が明らかになるだろう。

南アフリカ1.4m望遠鏡は名古屋大学を中心とするグループによって南アフリカ共和国サザーランド観測所に設置された。近赤外線カメラSIRIUSは名古屋大学・国立天文台のグループによって開発・製作され、主に南アフリカ1.4m望遠鏡に取り付けられ、南半球からしか観測することのできないマゼラン星雲や星形成領域、銀河などの観測に使われている。

この結果はアストロノミカル・ジャーナル誌2003年3月号に掲載される。   



参考資料

おおかみ座暗黒星雲について

近赤外線カメラSIRIUSについて

南アフリカ1.4m望遠鏡について


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