IRSF1.4m望遠鏡指向精度測定マニュアル

指向精度測定について

指向精度の測定では、全天の星を導入して視野中心からのずれを測定する。
ずれの中から系統的な成分をパラメータとして求め、ソフトウェアで補正してやることで、
指向精度を向上させることができる。

IRSF1.4m望遠鏡では、一部のパラメータが経年変化を起こしていることが分かっている。
原因はまだ分かっていないが、望遠鏡の指向精度を維持するためには、
定期的に指向精度測定をおこない、パラメータを求め直す必要がある。

SIRIUSを用いて測定をおこなう場合、導入した星の赤経・赤緯と恒星時を記録しておき、
撮った画像から導入した星の視野中心からのずれを求める。
これらのデータを指向精度の測定に用いるT-Pointというソフトのデータ書式に置き換える。
このデータを用いて、パラメータを求める。

SIRIUS を用いた望遠鏡指向精度の測定方法

SIRIUSを用いて指向精度を測定には、2つのソフトウェア" obj03"、"t_point"、
そしてSIRIUSで撮像した画像を使用する。

"obj03"は導入する星を自動的に選び、全天の星を導入するソフトウェアである。
"t_point"は導入した星の赤経・赤緯、撮像(導入)した時刻の恒星時を、
指向精度を求めるソフトウェア"T-Point"のデータ書式で書き出すソフトウェアである。

基本的な測定方法は、まず"obj03"を使って星を導入し、SIRIUSで撮像すると同時に
"t_point"で導入した星の赤経・赤緯と恒星時を記録する。これを全天の星について繰り返す。
具体的な測定の手順を以下に示す。

 1. コンソールを"telescope"、"client"とは別に2つ立ち上げ、
    それぞれ~obs/telescope フォルダへ移動する。
 2. 一方のコンソールで"t_point"を起動する。("./t_point")
 3. もう片方のコンソールで"obj03"を起動する。("./obj03")
 4. 導入する星の数を訊いてくるので、"1"(104個)か"2"(56個)を入力する。
 5. "obj03"は導入する星の候補数と最初の候補の星の赤経・赤緯・等級・スペクトル型を表示する。
    "2"を入力すると各候補の星のデータを順に表示し、最終候補までいくと先頭に戻る。
    できるだけ暗く、青い星を選び、"1"を入力する。
 6. 5で"1"を入力すると望遠鏡は選んだ星を導入するので、導入の完了をSIRIUSの"READY"フラグで確認し次第、
    SIRIUSで撮像する。同時に"t_point"コンソール上で"1"を入力し、星の赤経・赤緯、恒星時を記録する。
    (撮像は"Lo"モードでおこなう。積分時間はたいてい0.1秒でいい。例:"Lo 8 0.1 tpoint01 1")
 7. 6の作業が無事にできたら"obj03"で"1"を入力する。
    もし星が明るすぎるなどでもう一度同じ領域から探したいときは"2"を入力する。
    また測定を途中で中止したいときは"3"か"q"を入力すると終了できる。
 8. 5、6、7を繰り返して全天の星について測定をおこなう。
 9. 4で選んだ数の星について測定が済んだら、"t_point"で"2"を、"obj03"で"q"を
    それぞれ入力して両ソフトウェアを終了する。
10. "t_point"は"t_point.txt"、"t_p_corr.txt"という名前の2つのファイルを
    "~/obs/telescope/encoder"フォルダに生成するが、両ファイルの名前をそれぞれ
    "tp_yymmdd.txt"、"tpc_yymmdd.txt" に変更する。
    (yymmssは測定年月日。2001年2月3日ならそれぞれ"tp_010203.txt"、"tpc_010203.txt"に名前を変更)
11. SIRIUSで撮った各画像について"imexam" を行い、星位置をピクセルのXY座標で求める。(Jバンドのみで良い)
12. 11で求めたXY座標を導入した星との対応が分かるようにリストにまとめる。
13. 10で名前を変更したファイルと12のリストを加藤まで送って下さい。
    (指向精度・パラメータの決定は加藤がおこないます。)

注意
※10で"t_point"が生成したファイルの名前を変えるが、これは"t_point"が再起動すると
  上記の2つのファイル("t_point.txt""t_p_corr.txt")に上書きし、前のデータが失われてしまうためである。
  もし何らかの理由でt_point を一旦終わらせてしまったときは、必ず両ファイルの名前を変えて保存すること。
※"obj03"で使っている星は"bright star catalog"から撮っているので、非常に明るい(V≦7mag)。
  上にも書いたができるだけ暗く、青い星を使用しないと、0.1秒積分でもSIRIUSは飽和してしまう。
※測定の途中で、星を導入した瞬間に望遠鏡とドームが1周してしまうことがある。
  これは"obj03"ソフトウェアが望遠鏡の可動範囲を考慮していないために起こる。
  数分待てば無事に星の導入が終わるので、そのまま測定を続けることができる。