マゼラン雲

マゼラン雲とは

大小マゼラン雲は私たちの銀河系の最も近くにある銀河の一つです (大マゼラン雲:50キロパーセク≒16万光年、小マゼラン雲:60キロパーセク≒20万光年)。 このため、マゼラン雲にある星は、遠方の銀河と違って、 一つ一つの星を分解して観測することができます。

サーベイ領域(大マゼラン雲(左)と小マゼラン雲・マゼランブリッジ(右))

また、マゼラン雲では活発な大質量星(≧10太陽質量)の形成が起きています。 特に有名なのが大マゼラン雲にあるタランチュラ星雲(天文学会の通称は「30Dor」)です。 ここでは約100太陽質量という、これまでに見つかっている最も重い星が 数十個のオーダーで見つかっています。 このような激しい大規模星形成は私たちの銀河では見つかっていません。 (ちなみに、「カミオカンデ」で検出されたニュートリノを発生させた超新星爆発は、 この「30Dor」領域で起きたものです。)
さらに、マゼラン雲はその化学組成が私たちの銀河系とは異なっていることが知られています。 全物質に対する水素・ヘリウム以外の元素の割合を天文学の世界では「金属量」と呼びますが、 その金属量が私たちの銀河と比べて、大マゼラン雲で約4分の1、 小マゼラン雲で約10分の1しかありません。
この他にも、非常に高いガス対ダスト比、今も続く球状星団の誕生など、 マゼラン雲は極めて興味深い特徴を持った銀河です。 私たちはこのようなマゼラン雲の近赤外広域サーベイ観測をおこなっています。

何が分かるのか?

太陽のような星(恒星)は分子雲と呼ばれるガスの中で生まれますが、 水素の核融合反応によって安定的に燃え始める前の段階では、 燃えているとき(このときの恒星を主系列星という)よりも低温で、 しかも分子雲にあるダストの中に埋もれています。 (星の進化に関する解説は、 こちら(宇宙スペクトル博物館のページ)をどうぞ。 また、この分子雲の研究をしているのが隣の研究室のA研です。)
近赤外線は可視光に比べてダストに吸収されにくく、 また低温(1000〜3000度)の天体は近赤外でもっとも明るく光ります。 つまり、近赤外線による観測はこのような若い星を見つけるのにたいへん適しているのです。 私たちはこのマゼラン雲近赤外広域サーベイによって、 マゼラン雲にあるこのような若い星を大量に見つけだすことができると考えています。

また、メインのサーベイ観測と平行して、大小マゼラン雲の中心領域について、 変光星サーベイ観測をおこなっています。 この観測によってマゼラン雲にある大量の変光星を発見しています。 これらの変光星は恒星が水素の核融合反応を終えた後のいわば古い星です。 これらの変光星の明るさと変光周期の関係を調べることによって、 星の死んでいく様子を明らかにすることができます。 このような古い星もまた、低温でダストに埋もれているので、 近赤外線による観測がたいへん適しているのです。


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