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U研赤外線グループ

赤外線とはおおよそ波長1μmから数100μmまでの波長域の電磁波を指します。本研究室では、衛星や気球を用いて赤外線天体観測を行っています。宇宙空間にはダストと呼ばれる無数の固体微粒子が存在しますが、ダストは可視光を遮ってしまいます。天の川に暗い筋が見られるのは、ダストによる減光のためです。しかし、ダスト自身は赤外線で光っていて、この光を詳しく調べることで、宇宙空間にどのような種類の物質がどういった環境に存在するかを知ることができます。

AKARI allsky(クリックで拡大)
図1:「あかり」衛星のサーベイ観測で得られた天の川銀河の全天マップ(波長9μmと18μm、一部JAXA提供)

図1は天の川銀河の全天マップで、帯状に明るく光っているのが銀河面からのダスト放射に相当します。このダストは生命体の素になる有機物の生成や、固体惑星の形成、銀河の進化などに重要な役割を演じます。ダストが宇宙でどのように生成され、進化を遂げるのかを理解することで、化学的・物質的に豊かな現在の宇宙がいかにして作られて きたのかを知ることができます。しかし、赤外線の多くの波長は地球大気で吸収されてしまうため、地上からは観測が困難で、大気圏外に望遠鏡を打ち上げる必要があります。しかも、望遠鏡が暖かいとそれ自身が赤外線を出してノイズ源となるので、観測装置を含む望遠鏡全体を温度10K以下の極低温に冷やさなければなりません。そこで、本研究室とJAXA、東京大学などが力を合わせて極低温望遠鏡と赤外線観測装置を開発し、2006年に日本で初めての赤外線天文衛星「あかり」を打ち上げました(図2)。


図2:「あかり」衛星の打ち上げ(2006年2月)

このように宇宙赤外線観測は多くの技術困難を伴う未開拓の研究分野であり、まさにこれからの進展が期待されます。日本の宇宙赤外線天文学コミュニティーはまだとても小さく、その中で本研究室は重要な役割を担っています。



大学院生に対する研究指導

近年の衛星プロジェクトによる宇宙観測は、装置開発・プロジェクト準備期間がとても長いので、地上望遠鏡による観測とは異なり、院生は、自らが開発に携わった装置を使って観測するという研究スタイルを取れません。その代わりに、次の衛星のための装置を開発しつつ、今、活躍中の衛星を使って観測するという研究スタイルを取ります。そこで、まずは「あかり」の衛星データを実際に触ってもらい、世界最先端の科学研究ができることの醍醐味を経験してもらいます。それと同時に、実際の宇宙赤外線観測を支えている基盤技術を学ぶために、次期SPICA衛星に向けた機器開発実験に参加する機会を与えます。宇宙赤外線天体観測に関する科学的な側面と技術的な側面の両方をバランスよく体験して、総合的な物理知識を身につけてもらえるように配慮します。また、できるだけ早い段階で、英語による科学論文の執筆ができるように指導します。



卒業生の主な就職先

大学教員、JAXA、三菱電機、三菱重工、ニコン、NEC、トヨタ自動車、浜松ホトニクス、大学研究員、高校教諭、学芸員、IHI系列会社、野村総合研究所、ブラザー、中部電力、地方公務員

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