近赤外線で見た星の誕生現場
ほ座にある星形成領域 : RCW36
RCW36の可視光画像

RCW36の近赤外線画像

 星が生まれている現場もまた、暗黒星雲に隠されて可視光線では直接見ることができない。南天にある「ほ座」の「RCW36」と呼ばれる領域もその1つである。
 この付近の領域には、電波の観測によって、ほ座Cと呼ばれる巨大分子雲があることが知られていた。巨大分子雲とは、低温の分子ガスが太陽の何十万個分も集まっている領域で、星が生まれる現場でもある。分子雲に含まれる塵が可視光線を吸収してしまうため、暗黒星雲として見える。可視光線による観測では、星の生まれる現場までは見通すことができないのである。
 ほ座C分子雲までの距離は約2300光年と比較的近いものの、可視光では中央付近にRCW36と呼ばれる星雲がぼやっと光るのが見えるにすぎず、南天にあることも手伝って、これまではあまり重要視されていなかった。この領域を近赤外線で観測したところ、暗黒星雲に埋もれていた星団が姿をあらわした。星の分布を詳しく調べたところ、生まれつつある星の密度は、3000光年以内の距離では最も高密度な若い星団であるとされるオリオン大星雲に匹敵することがわかった。
 今回の私たちの近赤外線観測から、ほ座C分子雲は予想以上に大規模な星の形成現場であることが判明した。距離が近いので、星団が作られる過程を研究する上での貴重なサンプルになるだろう。
ほ座分子雲の位置

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