2004年度春季天文学会 記者会見資料

赤外線で暗黒星雲を透かして見た
銀河系の中心と星の誕生現場

西山正吾・馬場大介・佐藤修二・長田哲也・永山貴宏・加藤大輔・栗田光樹夫(名古屋大学)、
長嶋千恵・田村元秀・中島 康・中屋秀彦(国立天文台)、杉谷光司(名古屋市立大学)

銀河系中心部
星の誕生現場 RCW36

 宇宙に漂う暗黒星雲は背後の星の光を隠してしまう。しかし可視光線より波長の長い光である近赤外線ならば、暗黒星雲を見通して向こう側を見ることができる。名古屋大学光赤外線天文学グループは、南アフリカに設置した口径1.4mの望遠鏡で近赤外線による天体観測を行なっている。近赤外線の短め・中間・長めの3つの波長で観測すると、3色擬似カラーの画像が得られる。
 私たちの銀河系の中心は、その手前に大量の暗黒星雲があるため可視光線で直接見ることができないものの1つである。この銀河系中心領域を、満月が縦に4個・横に10個ならぶ広い範囲にわたって近赤外線で撮影した。これほどの広い範囲をこれほどの解像度と感度で「近赤外カラー撮影」したのは世界で初めてである。これから銀河系中心部の構造や暗黒星雲の性質を調べることができる。
 星が生まれている現場もまた、暗黒星雲に隠されて可視光線では直接見ることができない。南天の「ほ座」の領域で、生まれたばかりの星が、有名なオリオン大星雲に匹敵する密度でひしめいていることを初めて明らかにした。

参考資料
 南アフリカ1.4m望遠鏡について
 近赤外線カメラSIRIUSについて

PDF版資料