天体位置計算
経緯議式望遠鏡は、ちょうど展望台にある双眼鏡のように、
向く方向を変える方位軸と、見上げる角度(仰角)を変える高度軸の2つの軸を回して星を追尾します。
この方位と高度を用いる座標系を「地平座標系」と呼びます。
ちょうど戦艦に付いている砲台のような動きを想像するとわかりやすいかと思います。
これに対して、天体の位置は通常、「赤道座標系」と呼ばれる座標系で表されます。
例えば、地球上の位置を表す際には東西方向を表す緯度と南北方向を表す経度を使って表しますが、
「赤道座標系」もこれとよく似た座標系です。
「赤道座標系」ではちょうど、私たちが地球の中心にいて、
地球の表面に天体があるのをイメージしてもらえば良いかと思います。
ただし、「赤道座標系」では経度・緯度の代わりに「赤経」と「赤緯」を用います。
赤経は地球の自転方向の角度座標で、ある地点を原点(この原点を「春分点」という)として、
時角で表されます。時角とは角度を時刻のように表すことで、15°を1時(1h)とします。
角度の25°を時角で表すと1時40分(1h40m)となります。
赤緯は南北方向の角度座標で、地軸に垂直な向きを0°として北を正に南を負にとります。
天の北極の赤緯は+90°、天の南極の赤緯は-90°です。
経緯議式望遠鏡で星を追尾するためには、
星の位置を「赤道座標系」から「地平座標系」へ変換する必要があります。
この計算では、星の位置(赤経・赤緯)、正確な時刻、観測位置(経度・緯度・標高)、
観測地の気圧・温度が必要となります。
また、地球の自転・公転による歳差運動・章動・光行差、
地球大気の屈折による大気差、望遠鏡構造の持つ誤差の補正等を計算に組み込んでいます。
このような計算を速い周期(本望遠鏡では0.1秒周期)でおこなえるようになったのは、
計算機の性能が飛躍的に良くなった最近(1990年代以降)のことです。
これまで1.4mクラスの望遠鏡は赤道儀式であるのが普通でしたが、
これからは中小口径の望遠鏡でも経緯議式が主流になっていくのかもしれません。
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